歯周病とは
現代病である歯周病
厚生労働省が発表している歯科疾患実態調査(平成11年度)によると、私たち日本人のほとんどが歯周病を患っていることが分かっています。
―歯周病の割合
30代後半〜40代前半 → 約80%
40代後半〜50代前半 → 約90%
とても多い数値です。
また、歯周病の初期症状である歯肉炎についての数値を見てみると
―歯肉炎の割合
10代後半~20代前半 → 約50%
というデータもあります。
歯肉炎・歯周病は、自覚症状がない方も多く、気になり始めた頃には症状が進行していることが多いです。
歯周病の正体
「歯周」とは「歯の周囲にある組織」を表し、歯の周りに存在する「歯肉」や「歯槽骨」の病気です。
- 歯肉の腫れ(歯肉炎)
→歯肉が炎症を起こしている状態 - 歯槽骨の破壊(歯周病・歯槽のうろう)
→歯と歯肉の間の歯周ポケットが深くな理、歯の土台となる骨が破壊される
最終的には歯が抜け落ちてしまい、入れ歯・インプラント・ブリッジなど、何らかの治療が必要となります。
歯周病は、日本人が「歯を失う最も多い原因」とされているため、当クリニックでも定期検診・歯のクリーニングを推奨させて頂きながら、啓蒙を行なっています。
歯周病のセルフチェック
- 朝起きた際、口の中のネバネバが気になる
- 歯磨きをしていると、よく出血する
- 口臭が気になる
- 歯肉が赤く腫れている
- かたい食べ物が噛みにくい
- 歯が長くなったような気がする(歯ぐきが下がっている)
- 前歯が出っ歯になってきた
- 歯と歯の間に隙間がでてきたように感じる
- 食物が挟まりやすい
以上の中で、思い当たる項目はいくつあるでしょうか?
<3つ当てはまる方>
油断はできませんが、日々のセルフケアと定期的な歯医者さんへの通院で歯周病を防ぐことができます。
<6つ当てはまる方>
歯周病がすでに進行している可能性が高いです。
<全て当てはまる方>
歯周病の症状が、かなり進んでいると判断できます。
―心当たりのある方は、早めに歯医者さんへご相談ください。
歯周病が与える影響
狭心症・心筋梗塞
心筋への血液供給がされにくくなってしまうことで起こる病気。この血液供給を妨げるのが、動脈硬化です。
動脈硬化は、
- 乱れた食生活
- 運動不足
- ストレス
など、身体的・精神的なストレスが主な要因とされてきました。しかし、現代では、そのほかの因子として「歯周病原因菌などの細菌感染」も問題視されています。
歯周病原因菌などによって、プラーク(脂肪性沈着物)ができてしまい、血液の通り道を妨げてしまうことで動脈硬化を誘発します。その沈着物が剥がれて血の塊ができてしまうと、血管の細い部分で詰まりやすくなってしまうのです。
脳梗塞
脳血管が詰まる病気である脳梗塞。
頸動脈や心臓から循環された血の塊やプラークが、脳の血管に詰まる可能性も考えられます。歯周病を患っている方と、そうでない方を比較した場合、「2.8倍」の数値で「脳梗塞になり易い」ということが分かっています。
健康診断等で、
- 血圧
- コレステロール
- 中性脂肪
など、高い数値結果がでた方は、動脈疾患予防を積極的に行う必要があります。
歯周病の予防や治療もその1つとお考えください。
低体重児早産
妊娠さんが歯周病を患っている場合、
- 低体重児
- 早産
など、通常の妊婦さんよりもその危険度が増してしまうことが指摘されています。
タバコ・アルコール・高齢出産など、低体重児や早産の要因となるものは様々ありますが、歯周病が原因となるケースはそれらの7倍以上の危険率があるとされています。
とても高い数字であることが分かります。
歯周病細菌は血中から胎盤を通して、胎児に感染してしまうと想定されています。
生まれてくる赤ちゃんの健康のためにも、歯周病予防を徹底していきましょう。
誤嚥性肺炎
高齢者などに多い誤嚥(食道ではなく気道に飲み込んでしまうこと)は、誤嚥性肺炎と呼ばれる症状の要因となります。
高齢になると肺や気管の機能が衰えてしまうため、誤嚥が起こりやすいのです。そのため、お口の中の細菌が気管から肺の中へ入ってしまうことが十分にあり得ます。
誤嚥性肺炎の原因となる細菌は様々ですが、中でも一番多いのは歯周病菌であることが分かっています。
誤嚥性肺炎を予防していくにも、歯周病にならないように口腔環境を整えておくことが大切です。
骨粗鬆症
骨粗鬆症は、特に閉経を迎えた女性に多い症状であり「閉経後骨粗鬆症」と呼ばれます。
閉経によって卵巣機能が低下し、エストロゲンと呼ばれるホルモンの分泌が低下することで、骨粗鬆症が発症しやすくなります。
つまり、全身の骨がもろくなってしまう状態です。歯を支える歯槽骨も、もちろんその中に含まれます。
以上のことから、「骨粗鬆症」と「歯の喪失」は深い関連性があるといえます。閉経を迎えた方は、特に注意していきましょう。
関節炎・腎炎
口腔内に生存する歯周病原性細菌には、黄色ブドウ球菌・連鎖球菌などの様々な菌が数多く存在します。
これらの菌が血液中をながれ、更に歯周炎によって生成された炎症物質も入り込んでしまうことによって、関節炎や糸球体腎炎などの発症につながります。
メタボリックシンドローム
内臓脂肪の蓄積が高まると、
- 血中脂質異常
- 高血圧
- 高血糖
など、異常所見が複数見られる病態である「メタボリックシンドローム」と診断を受けます。歯周病の病巣から放出される歯周病菌由来の毒素は、血糖値を上昇させる要因となることが分かっています。
特に、重度歯周病患者では「動脈硬化」や「心筋梗塞」が発症するリスク亢進と密接に関係すると考えられています。
当院の歯周病治療
全身疾患のリスクを減らすために
日本人が歯を失う原因では、歯周病(歯槽膿漏)がトップになっています。
また、成人の80%が歯周病にかかっているといわれており、初期段階では自覚症状が出にくいため、20代や30代でかかっているケースも多いのです。
歯周病治療は、歯石の徹底的な除去です。歯周病は生活習慣病ですからケアが足りないと再発し、進行してしまいます。
そのため、厳格なプラークコントロールと定期的な検査による早期発見、予防が重要になってきます。
プラークコントロールの重要性
お口は内臓の入口であり、健康の入口であると言われています。
口腔内の正しいメインテナンスにより、むし歯や歯周病予防だけでなく、様々な全身疾患を予防できるのです。プラークは細菌のかたまりであり、内毒素や分解酵素を吐き出します。
こうしたものが血液に乗って全身を巡って、心臓疾患・動脈硬化・肺炎・腎炎・低体重出産・早産・関節炎・骨粗鬆症などの問題を引き起こすきっかけになることがわかってきています。
特に高齢者の死因として上位となっている誤嚥性肺炎では、口腔ケアの重要性が注目されています。定期的なクリーニングでプラークを極力減らして全身の病気予防に役立てましょう!